遠くへ旅に出たい創作者の雑記

取り留めのないことを思いついたままに書いてます。自サイトにて一次創作の小説とイラストをぼちぼち。URL:https://plus.fm-p.jp/u/no104fish

しごでき上司とポンコツ部下

乙女ゲーをやっててふと昔のできる上司のことを思い出したので自分語りを書いていく。

 

※『even if TEMPEST』のネタバレを若干含みます。

 

クライオスルートでクライオスが自身の病の悪化で裁判に来れなくなったとき、すごく心細く感じたんですけど、このときの感情から新卒で入社したときの直属の上司のこと思い出しました。

上司は仕事ができて人望も信頼も厚く、要領のいい人でした。なので社内ではとても人気があって老若男女問わず慕われてました。あの人の下で働けるなんてラッキーだと言われたほど。陰キャでオタク街道まっしぐらな私は、すごい…こんなマンガのシチュエーションみたいに好かれる人おるんか…となった記憶。端的言うなら「人たらし」でした。

入社時の予定では、私は一人でオーバーワーク気味だった上司と分担するために配属されたのですが、その年の冬に会社の人員不足で上司が他へ移ることが決まり、当然人員の追加はありませんでした。

一人でもできると能力を上に見込まれたのはありがたいことなのかもですが、本来は外れるはずじゃなかった(外れるとしても2〜3年後で、代わりの人が来るだろうと言われていた)し、仕事のできる上司でもキツいとこぼしているところに一人取り残されることに絶望しました。

上司と違って役職もなく入社して1年も経ってない新人が、先輩であり年上でもある人たちに指示を出していかなきゃいけない。ただでさえタスクが多く、一人で抱えれば日によってはトイレに行くこともままならないくらい忙殺される。

上司は優秀だからギリギリなんとかできたかもしれない。ポンコツの私ではとても上司のようにはできない。仕事を滞らせて周囲に失望されるんだろうという不安で家で一人ボロボロ泣いていたし、気持ちに余裕もなく毎日必死だったことを覚えています。

上司は入社当初から惜しみなく仕事やスキルを教えてくれて、厳しかったけど一人でこなすために必要なことをたくさん教えてくれました。

仕事に対しては本当に細かく指摘されて、これでは時間がかかって一人では限界があると感じていました。私は上司がきっちりこなしてるのに仕事が早いと思っていたのですが、手を抜けるとこは抜いていると言っていました。

全ての仕事をきっちりこなせるようになれば、絶対に手を抜いてはいけないところと手を抜いて良いところを自分で見極められるようになる。仕事はきっちりこなしつつ、ゆくゆくは早くなるようにという意図だったそうです。

それと入社してすぐから常々「一人でやろうとしないで、手の空いてる誰かに手伝ってもらえばいい。自分もそうしてるからなんとかやれてる」とも言っていました。上司は仕事も早かったけど、人を頼るのも上手でした。任せて良いことであれば同じ部署にいる人でも担当できる。完全に一人になるかは自分のやり方次第だと気付かされたように思います。

さらに、バカ正直でパワハラ上司とも真っ向から衝突していく私に人間関係とか処世に関することも結構教えてくれました。進捗ヤバいときに嘘をつかずかつ怒られずにパワハラ上司を回避する方法とか、人から好かれたり信頼されるための方法とか、仕事や人間関係に対する考え方とか。

「積極的に相手の良いところを褒めたり、頑張りは労った方がいい。誰でも認められれば嬉しいし、あの人はちゃんと見てくれているんだと思ってもらえるのは自分の得になる」

上司は私を直接褒めることもあったけど、それ以上に自慢話をするように私を褒めることが多かった。ほとんど顔も知らない別の部署から(上司は顔が広い)用事があって来た人が「上司さんがあなたのこと仕事できる、やる気がある、頑張ってるって褒めてたよ」って声をかけてくれることが頻繁にあり、私の見てないとこでも言ってくれていたことがわかった。

それこそ入社から3ヶ月めくらいまでは上司と比較されてサラッと貶されることも多かったのですが、いつからか風向きが変わり褒められることが増えていくと同時に貶される機会も減っていきました。

上司がいなくなって一人になってからも、頑張ってるね、安心して仕事任せられる、といろんな人に言ってもらえるようになりました。私は最終的に一人でこなせるようにはなったので、決して仕事ができないというわけではなかったけど、特別仕事ができる人でもないと思います。恐らく入社当初から上司がいろんな人に私のポジティブな情報を植え付けた結果、上司より劣っていても温かく見守り、助けてくれる土壌が残ったんだと思います。

上司が部署を離れる前に、単純に仕事だけでなく上司自身が自力で見つけてきたコツやノウハウまで教えてくれたことについて聞きました。自分で考えて身につけたものまで全て教えてしまって良いんですか?中には自分よりも仕事ができるようになるのを嫌がって教えるの渋る人もいますよね?と。そのときに返ってきた答えが

「部下が優秀に成長すれば、教育係として自分の評価も上がる。自分の仕事も楽になるから良いことしかない。くだらないプライドは捨てた方が良い」

でした。人の上に立つ人の考え方だなと感じたのと同時に、仕事できる頑張ってるって私のことを広めてくれたことはここにも通ずるのだなと理解しました。私ができると広まる=教育係の自分の手腕も広まる。あえて悪意を持った言い方をするなら印象操作であり、利用されてるわけですが(笑)

でもそれが私の足を引っ張ったり、デメリットになることは決してなかったように思います。むしろ私は何も労せず普通に仕事してるだけで、上司の宣伝のおこぼれを頂戴したようなものです。

上司の言葉はそのまま私には適用できないものもありました。上司の人望の厚さや役職だからこそ通用するものもあって、特に褒める労う指示を出すというのは心理的にも難しく感じて頭を悩ませました。

私は立場として指示を出すことが多くても、同じ部署の人とは対等であることを常に意識していました。指示はお願い、褒めるはあなたのおかげで〜、労うは感謝の言葉に転換して。元々自分一人では捌ききれない仕事、支えてくれる人たちへの感謝だけは忘れないようにと常に意識しながら新人なりに頑張ってました。

それが上手くいったのかはわかりません。結局数年後にはパワハラ上司にうんざりして仕事を辞めてしまったんですけど、しばらくして仲良くしていた方から「◯さんがあなたがいた頃が一番仕事が楽しかったって言ってたよ」と教えてくれました。

褒められた経験が限りなく少なくて自己肯定感が底辺、加えて褒められると舞い上がっちゃうタイプなのですが(ここで自分語りしてる時点でそうなんですけど)褒められたときは常に教えてくれた上司と支えてくれるみんなのおかげですと答えていた。当時も今も心から本気でそう思ってます。その気持ちを持ち続けて調子に乗りすぎずに済んだのは紛れもなく周囲の人に恵まれたおかげだなと。

上司はゲームやマンガのキャラのように清廉ではないですが、立ち回りが上手く強かで、私にはない考え方をたくさん教えてくれました。口が少々軽いことだけが玉に瑕という人でしたが、今でも感謝しています。

というのを久々に思い出したという話でした。記憶が薄れないうちに備忘録として書いておけて良かったかも。